個人レッスンの教材に“烟还是少抽好。”という文が出てきた。
生徒さんは“少”を「少ない」と理解していたため、
文意をつかむのに難儀していたようだ。
この場合の“少”は「少なく吸う」という意味ではなく、むしろ禁止に近い。
だから訳は「やっぱりタバコは控えた方がいいよ」となる。
ついでに言えば、この文は“抽烟”という熟語の目的語部分の“烟”が
前に出て来ているので、学習者は余計に難しく感じてしまう。
“抽烟”はいわゆる離合詞で辞書にはchōu//yānと表記されている。
さて、この“少”だが、《小学館中日辞典第2版》にはこう書いてある。
「連用修飾語として用い,多く禁止を表す: …するな.控えろ.」
例文としては、 少说废话(くだらないことを言うな)、
你少管闲事!(余計なおせっかいをするな)などが挙げられていて、
実に分かりやすいのだが、
生徒さんに電子辞書で“少”を引いてもらったところ、
その辞書にはこの「禁止」の用法の解説が載っていなかった。
しかし、よく見てみると、「少ない」という語義の例文として
公园里人很少(公園の中は人が少ない)と一緒に
少吃甜食(甘い物を控える)と載っていた。
中国人にとっては、このふたつの例文の“少”の語義は同一かもしれないが、
少なくとも日本人学習者にとって、このふたつの“少”は全く別物だと思う。
では、なぜこのようなことが起きるかというと、
日本で出版されている辞書や文法書は、
すでに中国で出版されているものを「訳しただけ」のものが多いからだ。
日本人による日本人のための辞書もなくはないが、多くがそうである。
だから、それらの辞書には無意味で使えない例文が多い。
その点、《小学館中日辞典》は、第2版になって《现代汉语词典》の呪縛から
やや逃れた感があって、だいぶ使える辞書になったと思う。
問題は文法書だ。日本人のために執筆された文法書が見つからない。
英語の文法書と比べれば、本の厚さからして違うし、
内容の充実度がまるで違うのは一目瞭然だ。
その文法書を1冊勉強して、出て来た例文を全て暗記すれば、
日常会話には困らなくなるくらいのものが欲しい。