Archive for 8 月, 2008

1日2020キロカロリーの食卓

8 月 29th, 2008

 農林水産省が発表する「農業白書」のなかに「食料の不足時の対応」という項目があります。2015年に、仮に輸入が完全に止まる事態を想定し、日本国内の生産物だけでどのような食卓が構成できるかをシミュレーションしたものです。

 その内容は驚くべきもので、毎日の朝食は「ご飯1杯・ぬか漬け1皿・粉吹きいも1皿」。昼食は「ふかし芋1個・焼き芋2本・りんご1/4個」。夕食は「ご飯1杯・焼き魚1切れ・焼き芋1本」しか食べることができなくなるといいます。しかも1日に使える調味料は砂糖小さじ6杯・油脂小さじ0.6杯だけ。味噌汁は2日に一杯しか飲めず、牛乳は6日にコップ1杯、たまごも7日に1個しか食べることができない悲惨な状況です。肉は超高級品となり、100グラムの肉でさえ9日に1回しか食べることができません。

 以上のメニューでも1日あたり2020キロカロリーが得られるため最低限必要な分は確保されますが、この値は昭和20年代後半の水準です。しかも、この試算は「熱量効率の低い肉や野菜から、芋などの熱量効率の高い作物に生産転換する」方針を全国で進めた場合の試算です。そのため現状のまま輸入が完全にストップすると更に酷い状況になるということです。

 2007年は外国への食糧輸出を制限・規制する国が増えた年でした。インドでは米・小麦の輸出禁止が決定され、ベトナムでも追加の輸出契約が禁止されました。ロシアは大幅な輸出税を導入し、中国は大豆、トウモロコシ、ソバの輸出抑制措置を導入しています。そんな中、日本では食料品価格の値上がりを気にする声はあっても、何も食べることができなくなるという危機感は少ないように思われます。しかし、お金さえ出せば食糧が買える時代は少しずつ終わりに向かっていると考えるべきで、近い将来1日2020キロカロリーの食卓が現実になるかもしれません。

中東に誕生する未来型都市

8 月 25th, 2008

 アラブ首長国連邦を構成するアブダビ近郊で、完全無欠のオアシスが2013年に誕生します。「マスダル」と名付けられたこの都市は、二酸化炭素排出量ゼロを実現し、再利用可能なエネルギーのみを用いて機能します。設計は、世界的に有名な英国人建築家ノーマン・フォスター氏で、予算は約1兆6000億円を見込んでいます。


 この世界初となる『完全に持続可能な環境都市』建設のために、数百億ドルのオイルマネーが注ぎこまれることとなります。マスダルは、総面積7k㎡の砂漠の真ん中に建設される未来型都市で、古代のキャラバン都市のように城壁で囲まれて、その中に5万人もの住民を収容します。電力は主に太陽光発電と風力タービンで供給し、廃棄物の99%をリサイクル、もしくは分解します。水の総使用量は50%削減され、太陽光発電で海水は脱塩化したものが飲料水となり、生活用水や工業用水は完全に再利用されます。また、市内には自動車が存在せず、超高速地下鉄と軌道上を走る無人運転タクシー交通機関のみとなります。全建築物はリサイクル可能な再生素材で建てられます。こうした建設の背景には「油価高騰で潤いながら、地球環境を悪化させる産油国」というイメージを回避したいこと、そして、石油資源が枯渇した後も世界のエネルギー市場で主導的役割を維持したいなどの思惑が見え隠れします。


 CO2排出ゼロの都市構想は、中国やドバイ首長国などにもあるようですが、力の入れようは、アブダビが他を圧倒しています。中東の豊富な資金にものをいわせた「環境にやさしい都市」の構想は他の国にも大きな影響を与えていきそうです。

アマゾンは誰のもの?

8 月 23rd, 2008

 いわゆるBRICsと呼ばれる国の中でも、近年、特に注目集まるブラジルには「地球最後の水資源の宝庫」「地球の肺」などと呼ばれ、貴重な存在として知られるアマゾン熱帯雨林があります。このアマゾンは世界の二酸化炭素の約3分の1を酸素に変えているといわれ、約7割がブラジルの国土に当たりますが、このアマゾンをめぐって大きな問題が起きています。それは外資によるアマゾンの「買い占め」です。


 1971年、ブラジル政府は一つの郡につき、外資が25%以上の土地を保有することを禁止しました。しかし、98年に当時のAGU(連邦弁護庁)はこの規制を撤廃し、ブラジルに住所があれば事前に許可なく、外国の個人や法人でもブラジルの土地を購入出来るようにしました。その結果、外資による土地の購入を規制する法律がなくなったため、現在アマゾンの土地の56%が外国の個人や法人によって所有されるという事態となっているのです。それだけではなく、希少動物の存在、金や銀、天然ガスなどの資源が埋蔵されていることを売り文句にし、現在アマゾンの土地はネットで販売されており、ネット上では6~600ドル(1ha当たり)で売買されています。


 こういった中で、ブラジル政府に対し、アマゾンの森林破壊に対して保護を行っていないという国際的な非難が高まっています。そして、外国籍の個人、法人によって半分以上の土地が保有されているという現状に危機感を強めたAGUは、現在外資系企業によるアマゾンの土地購入を禁止する法案を準備しています。


 ブラジルのルラ大統領は、「アマゾンの主はブラジル国民だということを世界の人々に理解して欲しい」と述べています。しかし、ブラジル政府がアマゾンに対する保護を充分に行っていないという先進国からの非難に対しては、「世界の公害の70%は先進国に問題があるのに、前世紀に怠ったことを責任転嫁し、今になってアマゾンに目をむけるのはおかしな話だ」と発言しています。国を富ませることと環境を守ること、こうしたジレンマにブラジルは悩んでいるようです。

空飛ぶホテル

8 月 19th, 2008

 お盆休みに飛行機で旅行に行かれたり帰省された方も多いかと思います。そんな中、全日本空輸が、“空飛ぶホテル”と称される欧州エアバス社の超大型機「A380」購入の検討を始めました。これは、需要の伸びている欧米路線へ2012年に就航させる構想で、実現すれば日本の航空会社で初の大型エアバス機導入となります。しかし、これまでエアバスのライバル・米ボーイングの新鋭機「B787」導入に大きな期待をかけてきた全日空が、急に心変わりしたのには他に理由がありました。


 燃料費高騰の中、エアバス、ボーイングの両者はオイルマネーで潤う中東諸国の航空会社からの引き合いを期待し、互角の受注合戦を繰り広げてきました。そんな中、全日空はB787の第1号購入者として、世界の先陣を切って最新鋭機の引き渡しを受ける立場にありました。当初は北京五輪に合わせて中国路線にB787を華々しく就航させる予定だったのですが、納入は09年7~9月期へとずれ込み、全日空は大きなビジネスチャンスを逃してしまうこととなりました。


 2007年の世界の航空機受注数は、ボーイング約1400機対エアバス約1300機でほぼ拮抗しています。そんな中、日本では全日空、日航ともボーイング一辺倒で、日本でのエアバス社機シェアはわずか4~5%に過ぎません。ボーイング“独占”の背景には1980年代以降、対米貿易摩擦解消のため、政府が日本の航空会社にボーイングの航空機を重点的に購入するよう要請してきたからとされています。しかし、B787の納入延期というボーイング自ら招いた失策は、あろうことかエアバスにとって日本攻略のまたとない機会となってしまいました。


約20年間、日本の空を支配してきたボーイングに挑むエアバスです。全日空の戦略転換は、実現すれば大きな転換点となることでしょう。原油高に伴う航空機燃料費の高騰で取り巻く環境は予断を許さない状況です。全日空の代表が「A380」の購入を最終的に決断するのは9月です。こうした不透明な時代に、全日空が下す大胆な決断はどのような結果となるのか、業界とともに注目です。

10人に1人

8 月 11th, 2008

 約1億2771万・・・これは総務省が発表している6月1日現在の日本の総人口の概算値です。それが何と50年後には総人口が9000万人を下回ると予想されています。この人口減少や高齢化による危機を克服するため、自民党は50年間で日本の人口の10%に当たる1000万人を海外から移民として受け入れようという提言案を提出しました。


  具体的な政策としては、法務省、厚生労働省などに分かれている外国人政策を一元化するため「移民庁」の設置、基本方針を定めた「移民基本法」や人種差別撤廃条約に基づく「民族差別禁止法」の制定、外国人看護師・介護福祉士30 万人育成プラン等が掲げられています。また、行政サービスを提供しやすい体制を整える為、「外国人住民基本台帳制度」の導入や、永住許可の緩和、更に、帰化制度を原則的として入国後10年経過したら日本国籍を取得可能に改めるなどといった内容も盛り込まれています。


  先じて失敗したフランスは第二次世界大戦後の復興の担い手として多くの移民を受け入れました。復興期には一定の成果を上げていましたが、安定期に入ると移民の失業が深刻化し始めました。現在フランス全体の失業率は10%と言われていますが、移民の失業率は30%とも言われています。特に若年層の失業率は高く、2005年にはパリ郊外で移民系の若者が暴動を起こしました。これは失業問題と移民問題という深い病根があり、所得格差や差別的待遇など様々な理由から、フランスに「同化」できなかった移民社会の不満が爆発したと言われています。この際、政府は非常事態法の適用とともに、職業訓練開始年齢の引き下げ、移民審査の厳格化、雇用差別に対する罰則の強化などの対応策を発表し、事態は収束していきました。しかし、根本的解決には至っておらず、引き続きフランスの対応が注目されています。日本政府は本当に移民政策を行うつもりならば、まず日本人と同じ様に働ける体制をつくらなければ、フランスの二の舞になってしまうのではないでしょうか。

ジャズはどうやって生まれたのか

8 月 8th, 2008

 ジャズはクラシック音楽的要素を持っていたり、民族音楽的またはどこか野生的な音楽性を持っています。そのジャズは一体どうやって生まれたのでしょうか。 


  アメリカにジャズと呼ばれる新しい音楽文化が生まれたルーツは、アフリカから連れてこられた黒人奴隷にあります。現在のヴァージニア州ジェームズタウンに最初のイギリス植民地が開かれ、12年後の1619年、20人の黒人を乗せたオランダ船がやってきて、黒人を奴隷として売りました。これが、悪名高い近代奴隷貿易史の始まりです。それから19世紀の初めに奴隷の輸入が禁止されるまでの200年間に、アメリカへ送りこまれたアフリカ人の数は1,000万人を超えたと言われています。
これが、後々アメリカにジャズという新しい音楽文化を生み出す要因になりました。黒人奴隷は植民者にとって単なる働く機械にすぎず、生まれ育った文化的背景や人間性は無視されました。そのような酷い扱いを受ける中、目の届かない畑仕事の中で反乱の企てなどが話合われないようにと、声を合わせて歌うことを強制されたという説があります。これがジャズの発祥の源泉となっていることは言うまでもありません。

また、黒人奴隷はまず奴隷商人の手に引き渡されることによって家族や親せきとの関係を断ち切られ、海を渡った先のアメリカの奴隷市場でセリにかけられ、同じ船に乗っていた奴隷仲間からも引き離されるという経験をしました。そして、売り渡された植民地での新しい奴隷仲間との出会いや黒人たちの主人である植民者の文化との出会いを経て、植民地で暮らす黒人奴隷たちは次第に独自の黒人共同体を作りあげました。その黒人共同体が生まれてから一世紀後、ジャズと呼ばれる音楽が生まれたのです。


 皆様は、普段どのような感覚でジャズをお聴きになっていますか。ジャズといいますと、お洒落、カッコイイ、大人が聴く音楽というイメージを持つ方が多いかと思います。しかしジャズが生まれた背景には、奴隷制度という悲しい歴史がありました。こうした歴史を思いながらジャズを聴くと、ジャズの味わい方も少し変わるかもしれません。

オイルをソイルへ

8 月 4th, 2008

 アラブ首長国連邦(UAE)アブダビの政府系ファンドが、今年6月にスーダンで7万エーカー(約283万平方キロメートル)の農地を開発する大型事業への出資を決めました。この案件の合言葉は「オイルをソイル(土地)へ」だそうで、実はここに中東の深刻な食糧事情が絡んでいます。


 世界的な食料価格の高騰は、中東地域も例外ではありません。特にUAEにおける食料の輸入依存度は85%と高く、さらにコメは輸入依存度が100%と国内では穀物生産がほとんど行われていないのが現状です。UAEはインド、パキスタンからの輸入が91%を占めていますが、これらの主要輸出国は国内需要を最優先して、最近は続々と輸出規制に乗り出しています。そのため、UAEにとって食料の確保は急務であり、「金があっても買えない時代が到来する」危機感が募っているようです。アブダビ政府が遠く北アフリカのスーダンにまで農業開発に乗り出すのは、こうした背景が大きく関与しています。


 また、アブダビがスーダンに投資する利点は食料確保だけにとどまりません。スーダンは同じアラブ同士であり、農業開発に出資することで、スーダンの現地住民に雇用機会が創出できるため、スーダン経済にも恩恵を与えます。ちなみにスーダンで農地利用されているのは耕作可能な土地のわずか16%であり、今後食糧問題が深刻になっていくほど、スーダンの農業開発が進展していくことが見込まれています。スーダンにとってこの開発は大歓迎で、無料の水、安価な土地、さらには免税措置も投資してくれた国に提供することを公言しています。


 双方の国にとってまさにウィン-ウィンの関係ともいえるアブダビとスーダンですが、こうした資源確保の動きは世界各国で始まってきています。日本も自主開発油田ならぬ、自主開発農地を真剣に考える時代が到来しているのかもしれません。 

だるまさんはどちらへ転ぶ!?

Add comment 8 月 1st, 2008

いよいよ北京オリンピックの開催まであと約2ヶ月です。開催国である中国ではオリンピックにちなんだ行事が行われたり、関連グッズが数多く出たりと、各地で盛り上がりを見せています。そんな中、中国国内では2008年8月8日のオリンピック当日に、何とか出産できないものかと、ほぼ毎日病院を訪れる夫婦が後を絶たないのです。これはただ単にオリンピックと日付が同じだからと言う理由ではありません。数字の「8」は中国語の発音が「発財(お金持ちになる)」の「発」に似て縁起が良いことが、夫婦に「この機会に子供をつくろう」と決意させたと言われています。その為、無理にでも「帝王切開」を望む夫婦が多数いるということです。オリンピック出産ブームにより、経済界ではベビー用品、乳児向け教育の業界に対するニーズの増加が予想でき、売り上げ増大が期待されています。 


 「オリンピック出産」で盛り上がっている一方で、本来のオリンピック特需であるテレビやDVDなどの売り上げは伸び悩んでいるようです。C-NEWSと日経産業新聞が共同で実施した「ネット1000人調査」(5月9日付日経産業新聞に掲載)では56%の人が北京オリンピックに「関心あり」と回答しました。ただ、テレビやDVD購入など消費行動に意欲を示す人は10%前後という低い数字が出ており、約1年前と比較すると、観戦旅行などの旅行関連に対する意欲は12%から5%に激減しているそうです。各業界には8の発財に肖った「五輪ベイビー特需」を期待する声が多く聞かれますが、このように分野によっては期待外れに終わる可能性も示唆されています。


 「発財」という期待を込められている北京オリンピックですが、経済への貢献度としては暗雲が立ち込めているようです。「8」という数字は日本や中国では縁起のいい数字ですが、西洋では不吉な数字と言われています。偶然にも今回の中国四川大地震は、オリンピック開幕の「88」日前に起こったそうです。国によって「8」の捉え方は様々ですが、果たしてこの「8」という数字は北京オリンピックにとって、吉と転ぶのでしょうか。


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