その434 MASTER TAPE~荒井由実“ひこうき雲”の秘密を探る~
16日夜9時~9時55分、BS2でMASTER TAPE~荒井由実“ひこうき雲”の秘密を探る~という番組が放送された。出演は松任谷由実、松任谷正隆、細野晴臣、林立夫、駒沢裕城、有賀恒夫、吉沢典夫、村井邦彦、雪村いづみ、シー・ユー・チェンというメンバーで、スタジオではユーミン、正隆さん、細野さん、林さん、駒沢さん、それから有賀さん、吉沢さんがアルバム『ひこうき雲』のマスターテープを聴きながらそのエピソードを語るというものだ。
多重録音されたそのテープを、全体で聴いたり、楽器のパート、歌のパートを取り出して聴いたりしながら自由に会話が進められていた。
ユーミンと正隆さんは並んで座っていた。私はその二人の表情を特に注視しながら1時間テレビの前にいた。
正隆さんが、当時のレコーディングディレクターである有賀さんにする質問はとてもシャープだった。聞かれた方が「オッと」と引っ込みそうな勢いだったが、現場ではどうだったのだろう。
印象に残っているのは、なぜノンビブラート唱法にようと思ったのかということと、「ひこうき雲」の最後のところの「かけーてゆくううう」というところを本当に歌っているのかという質問。ノンビブラートについては、有賀さんがユーミンのちりめんビブラートが嫌いだからという答えで、「ひこうき雲」の最後は、もちろん実際に歌っていたそうだ。
ユーミンの歌のパートについては、トラックを3つくらいあけて、何回も歌って良いところをつなげていくものだったそうで、そのやり方をユーミンが嫌がって泣いたという話もあった。
「雨の街を」のエピソードには思わずニッコリした。
レコーディングが1年もかかったため、最後の「雨の街を」を歌う頃には、もう歌うのも嫌になっていたそうだが、そんなある日、ピアノの上にダリアが挿してある牛乳瓶があり、スポットライトがあたっているように見えたというものだ。
前日に正隆さんと井の頭公園でデートして、その時に何の花が好きかという話になって、ダリアが好きと言ったことを思い出してレコーディングを乗り切れたという。
職場恋愛といえば、初めて会った時は「なんでこんなアメリカっぽい人たちとなんだろう」と思ったそうだが、1年の間に職場恋愛モードになって、「何とかの好きな赤烏帽子」状態になったというユーミンの表情も良かったわね。やっぱり恋の力は偉大よ。
その意味で「曇り空」の男声コーラスが正隆さんだったというのも嬉しかった。
さらに、正隆さんの演奏が雨のモヤモヤ感を見事に再現しているところも印象に残った。他の楽器のパートを取り出して聞いていても、細野さんが盛んにイギリスっぽいなぁと言っていたが、それは楽曲の特徴を感じながらそれぞれのミュージシャンがその場で得意な奏法を使って楽曲を見極めながら作り上げていくという方法により自然に紡ぎ出されたのだろう。
そうそう。ユーミンが、アルバム『ひこうき雲』では、雨や霧や雲ばかり歌っていると言っていたが、それには思わずいやいやいや、毎月壁紙を作っていて思っていることですが、ユーミンの曲はこのアルバム以外も雨や霧や雲がヒジョーに多いですから! と突っ込みを入れてしまった。
正隆さんの方は、MASTER TAPEを聞いていろいろなアイデアが浮かんだようで、それが今後どのように出てくるか楽しみだ。
なお、この番組の内容をおさらいするのに良いサイトを、事前にtcさんが教えてくださっていた。何でも掲示板の方にも書かせていただいたが、シティレコードのサイトの中の「An Episode in The Recordings of"Yuming's Classics」というコーナーだ。今回このレポートを書くにあたっても記憶の確認に使わせていただいた。
また、その前にもふるだぬきさんから、「ヤング・ギター」1973年9月号に載っていたアルバム『ひこうき雲』の予告記事を教えていただいた。当時の期待の高さをうかがわせるものとして、ここに改めて引用させていただく。
●荒井由実のレコーディングニュース
荒井由実さんと言えば、加橋かつみ君の「愛は突然に」を作曲したりしているから。知っている人も多いと思うのだけど、昨年の秋、シングル「返事はいらない」も出ていますネ! その彼女が今度はキャラメル・ママをバックにレコードを今制作中。彼女の音楽的才能に加えてキャラメル・ママの演奏となれば、確かに注目に値するだろう。








いやぁ、いい番組でしたね!
長いことユーミン・ファンをやっていて本当にヨカッタと思いました。高校生で初めて聞いた時の衝撃も鮮やかに蘇りました。マスター・テープって凄いですね。
「ひこうき雲」は73年リリースでレコーディングに1年かかったということはレコーディング時にはユーミンは19~20歳の頃。当たり前ですがピュアで伸びがあって素晴らしく、ノンビブラート奏法の成果が如実に出ていた感じがしました。
ノンビブラート奏法は、クラシックの世界では繊細な雰囲気や荘厳さ、素朴さの演出を狙って行われることがあります。有賀さんのこだわりも、ただユーミンのチリメン・ビブラートが嫌いだからという理由のほかに、プログレ・UKロック少女のユーミン作品の味と「自分は作曲家としてやっていきたい、歌うのはいやだった」と言うユーミンの歌唱が秘めるポテンシャルの高さを見抜いたレコーディング・ディレクターとしての天性や本能がそうさせたのではないでしょうか。
16トラックのマスターテープの各トラックをいろいろオン・オフして例えばユーミンのアカペラ「ひこうき雲」や細野さんのガット・ギターとユーミンの声だけのボサノバっぽい「きっと言える」など、今でも全く色あせないだけでなくすぐにでもリリースして欲しいなと思ったほどです。
さて、今年はツアーも見えていないので、番組中にユーミンが言っていたようなティンパンと一緒にクローズなライブが実現したら是非とも観てみたいものです(ま、以前の荒井由実ライブのようにチケットがたいへんなことになるでしょうね;)。
あと、ネットで面白い「ひこうき雲」との出会いをされた人のブログを見つけました。楽しいですよ。
http://blog.goo.ne.jp/8823blue/e/39ab0d631b7ebb07f45cd6c743a143fa
長々と失礼いたしました。
コメント by tc — 2010 年 1 月 18 日 @ 7:27 PM
tcさん、コメントありがとうございます。
> 「ひこうき雲」は73年リリースでレコーディングに1年かかったということはレコーディング時にはユーミンは19~20歳の頃。当たり前ですがピュアで伸びがあって素晴らしく、ノンビブラート奏法の成果が如実に出ていた感じがしました。
>
> ノンビブラート奏法は、クラシックの世界では繊細な雰囲気や荘厳さ、素朴さの演出を狙って行われることがあります。有賀さんのこだわりも、ただユーミンのチリメン・ビブラートが嫌いだからという理由のほかに、プログレ・UKロック少女のユーミン作品の味と「自分は作曲家としてやっていきたい、歌うのはいやだった」と言うユーミンの歌唱が秘めるポテンシャルの高さを見抜いたレコーディング・ディレクターとしての天性や本能がそうさせたのではないでしょうか。
確かにノンビブラートだと若いユーミンの声が甘くきれいに耳に入ってきますよね。
> 16トラックのマスターテープの各トラックをいろいろオン・オフして例えばユーミンのアカペラ「ひこうき雲」や細野さんのガット・ギターとユーミンの声だけのボサノバっぽい「きっと言える」など、今でも全く色あせないだけでなくすぐにでもリリースして欲しいなと思ったほどです。
本当に、宝のテープですよね。
> さて、今年はツアーも見えていないので、番組中にユーミンが言っていたようなティンパンと一緒にクローズなライブが実現したら是非とも観てみたいものです(ま、以前の荒井由実ライブのようにチケットがたいへんなことになるでしょうね;)。
なんだかすごい値段を言ってましたね(^^;
でも、荒井由実ライブの時のことを思えば、確かにそれくらいになりそうです。
> あと、ネットで面白い「ひこうき雲」との出会いをされた人のブログを見つけました。楽しいですよ。
> http://blog.goo.ne.jp/8823blue/e/39ab0d631b7ebb07f45cd6c743a143fa
ありがとうございます。
面白い出会い方をした人もいるのですね。
音楽でも文学でもそうですが、それに出会うか出会わないかというのは、そこに縁というものもあるのでしょうね。
コメント by みよこ — 2010 年 1 月 18 日 @ 11:01 PM