その377 『谷崎潤一郎の京都を歩く』
苗場のレポートはもう少しお休みして(^^;、つい最近読んだ『谷崎潤一郎の京都を歩く』というガイドブックについて書きたいと思う。
このガイドブックは、淡交社というところから出版されているのだが、実に内容が濃い。2005年の発行なので、ガイドブックとしては少し時間が経っているが、その内容の濃さから、資料としての価値がある。
まず、谷崎が初めて京都に来たときに書いた『朱雀日記』の話から始まる。それによると、初めて食べた京料理の印象は、東京人の谷崎にとって、あまりおいしいという感じではなかったらしい。確かに私なども小学校、中学校のときに京都へ修学旅行に行って、お味噌汁に驚いた経験があるので、当時の谷崎の驚きはいかばかりだっただろう。
それから、後に追悼文を書くことになる磯田多佳という人との出会いが書かれる。
この人は、誰にでも物怖じしない女性だったようで、夏目漱石などにも軽口を叩ける人だったそうだ。当時京都にいながら、デビューしたての谷崎の作品を読んでいたというのはさすが文芸芸妓と呼ばれた人というところだろう。
谷崎が彼女のことを書いた『磯田多佳女のこと』は、先日神保町で入手した。
これについて詳しくは次の記事で書かせていただくが、和紙の袋とじの本文がハードカバーで綴じられたその本は、谷崎の故人に対する思い入れが感じられて、読んでいてとても興味深い。やや右下がりの独特な書体、本文を四分空きで組んで、読点をその四分空きのところに押し込める独特な組み方が、なぜか読みやすくて美しい。
印刷方法も興味深い。ところどころに緑や赤が使われているのだが、それがまるで水彩絵の具を使ったように見えるし、表紙のお茶碗の絵に使われている藍色は、まるで釉薬で書いたようだ。残念ながら初版ではなく、箱もないのだが、この本は宝物になりそうだ。
なお、『磯田多佳女のこと』の表紙と箱の写真は、このガイドブックにも掲載されている。
それから、このガイドブックで磯田多佳さんについての資料として使われているもう1つの本である、杉田博明著『祇園の女―文芸芸妓磯田多佳』も、近く入手して読みたいと思う。
ところで、谷崎と京都と言えば、何と言っても『夢の浮橋』の舞台となった「後の潺湲亭」だろう。糺の森の東隣にあるその家については、とても多くのページ数が割かれている。転居癖のある谷崎が生涯で一番気に入っていた家で、健康の問題がなければ決して人に譲ることはなかったと思われる家なので、現在石村亭と名を変えているその家の内外の写真はとても興味深い。
このガイドブックには、谷崎が行ったであろう名所や谷崎贔屓のお店の写真、それからそれらの場所に印のついた地図も掲載されているので、今度京都に行くことがあったら、ぜったい持って行って、それらの場所を確認したいと思う。







