その357 『文豪ナビ 谷崎潤一郎』
谷崎関係の本をいろいろ検索していたら、『文豪ナビ 谷崎潤一郎』というのを見つけた。どうやら新潮社が自分のところで出している文庫本の売上げを伸ばそうと出しているもののようだが(^^) どんなことが書いてあるのかちょっと興味が湧いたので、本屋さんで見て購入した。
まず表紙だが、ご覧のとおり、すごいタイトルがついている。
「妖しい心を呼びさます」と書いてあるが、そっかぁ? まぁ、人によっては自分の隠れた部分を呼び覚まされることもあるかもしれないが、こう書かれると、誤解する人もいるかもしれない。
谷崎の作品は、確かにかなりアブナいものもあるが、「用の美」は持たない(^O^)ので、あらぬ期待をもって読まれるとガッカリする人もいるかもしれない。
採り上げられている小説は、『刺青』、『痴人の愛』、『春琴抄』、『卍』、『猫と庄造と二人のおんな』、『蓼喰う虫』、『鍵』、『瘋癲老人日記』、『細雪』で、いずれも新潮文庫に入っている。
表紙を開くと、そのうちの3つの作品について、それぞれをイメージした写真の中に作品中の一文が書かれ、その作品について触れられているページへのナビゲーションがついている。
いきなり出てくるのが『卍』。女性の下着がテーブルの上にたくさん並べられ、写真立てにはボンデージ。おーい(^^; まぁ、下着はわからなくもないけど、ボンデージはどうかなぁ。
この作品を私が最初に知ったのは、高田美和と三浦真弓主演でやっていた昼メロでだ。内容は10代の子供にはいささか刺激が強かったが、その関西弁がなんだかいい感じでねぇ。
本を買って読んだのは随分大人になってからだったが、猜疑心の塊になりそうなその内容に、読み終わったときには頭が痛くなったのを覚えている。つい最近読んだ『捨てられる迄』の系列にある傑作かもしれない。谷崎潤一郎おすすめコースというページには、「男女の三角関係も、谷崎のは半端じゃない! いちばんスゴイのが「卍」。良家の夫人が同性愛にはまってしまって、さらにはその夫まで……。」と書かれている。
次に出てくるのが『痴人の愛』。写真は水槽の中の魚を眺めている男性。なるほどねぇ。
最後に『細雪』なのだが、これが道頓堀極楽商店街入り口の恵比寿さん? 大黒さん?微妙(^^; 鯛があるから恵比寿さんかな。激しく違和感だけど……、そっか、鯛か。
その後に「目次」、「早わかり!谷崎作品ナビ」、「10分で読む「要約」谷崎潤一郎」、「声に出して読みたい谷崎潤一郎」、「私、谷崎のファンです」、「評伝 谷崎潤一郎」と続く。
最初はセンセーショナルに、中盤はわかりやすく、最後に国文学者による詳しい解説という流れだ。
要約がすごい。「あらすじ」ではありません! と書いてあるだけあって、その作品のエッセンスをギュッとまとめた見事なものだ。『痴人の愛』『細雪』『鍵』という長編をあっという間に読める。
声に出して読みたい谷崎潤一郎もいい。谷崎の美しい文章を体験できる。
そして何よりいいのが、「私、谷崎のファンです」だ。本上まなみと桐野夏生がエッセイを書いているのだが、特に本上まなみの文章が最高だ。めちゃくちゃわかりやすくて親近感がある。あんまり感激したので、その一部を引用する。
ひとつ好きになると他の作品も気になる、いくつか読んでいくうちに作者に対する興味が芽生える、小説からエッセイ(随筆)にも興味が沸いてくる、作家の周囲にいた人たちの発言も知りたくなる……。そう、たとえばミュージシャンのファンになって、一枚一枚CDを買ってゆくのとおんなじように。
そうやって私は谷崎ファンになりました。紀行文のような『吉野葛』に旅を夢みて、『痴人の愛』の男にいらいらし、『刺青』の世界に怖がって、『鍵』はエッチくさかったのでこそこそ読んで……。
『新潮日本文学アルバム』なんて本も入手して身辺も探ってみました。
まるで私を見ているようだ。もっとも、私は彼女のような飄々とした文章は書けないけど(^^; こんなに飄々と、しかもしっかりと的を射る文章をこんな短いページ数でまとめることができるなんて、本上まなみはもとから結構好きだったけど、ますますファンになってしまった。







