みよこの部屋 コメントページ

2006 年 9 月 24 日

その313 『秋刀魚の歌』

カテゴリー: 小説・作家 — みよこ @ 12:00 AM

今まで「小田原事件」とやたら書いてきたが、小田原事件って何? という人も多いと思う。
小田原事件というのは、谷崎が千代の妹せい子(『痴人の愛』のモデル)と結婚し、佐藤春夫と千代が結婚するという約束をしたのだが、予想に反して
「やだわよ!」
の一言で谷崎はせい子から断られてしまった。で、その後佐藤と千代のところへ行って、約束を反故にした。これに怒った佐藤春夫が絶交を宣言し、以来谷崎・佐藤双方でこの事件を題材にした作品を発表しあうという事態になったという事件だ。この当時谷崎夫妻は小田原に住んでいたため、小田原事件という。

で、この時期が奇しくも佐藤春夫の全盛期ともいわれるのだが、その中でも『秋刀魚の歌』は読者の涙を絞った。
後に谷崎自身も、『佐藤春夫に与へて過去半生を語る書』で

「たとえばあの『秋風のうた』や『秋刀魚のうた』や、何んという題であったか淋しい兄弟の会話から成る戯曲などは、読んで覚えずホロリとしたくらゐだった」

と書いている。
実際、この作品のすごいところは、この詩一作で小田原事件について他に説明はいらないくらいみごとに表現されていることだ。

この詩が谷崎夫妻へどれほど強烈なメッセージを放ったか、ここでこの詩の全文を引用したい(ルビは括弧内に表記)。

あはれ
秋風よ
情(こころ)あらば伝へてよ
──男ありて
今日の夕餉(ゆふげ)に ひとり
さんまを食(くら)ひて
思ひにふける と。

さんま、さんま、
そが上に青き蜜柑(みかん)の酸(す)をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり。
そのならひをあやしみなつかしみて女は
いくたびか青き蜜柑をもぎ来て夕餉にむかひけむ。
あはれ、人に捨てられんとする人妻と
妻にそむかれたる男と食卓にむかへば、
愛うすき父を持ちし女の児は
小さき箸(はし)をあやつりなやみつつ
父ならぬ男にさんまの腸(はら)をくれむと言ふにあらずや。

あはれ
秋風よ
汝(なれ)こそは見つらめ
世のつねならぬかの団欒(まどゐ)を。
いかに
秋風よ
いとせめて
証(あかし)せよ かの一ときの団欒ゆめに非ずと。
あはれ
秋風よ
情あらば伝へてよ、
夫を失わざりし妻と
父を失わざりし幼児とに伝へてよ
──男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食ひて
涙をながす と。

さんま、さんま、
さんま苦いか塩つぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食ふはいづこの里のならひぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。

佐藤春夫は、この小田原事件を前に詩に出てくる妻と離別し、小田原事件の後別の女性と結婚するが、妻譲渡事件を前にその女性とも離婚している。

それにしてもこの作品がいかにヒットしたか。当時生れていなかった実家の母でさえ、秋刀魚を焼くたびに

さんま さんま さんま苦いかしょっぱい

と口ずさんでいたくらいなのだ。私の母はおそらくこの詩の意味はさーっぱり理解していなかっただろうに。

2006 年 9 月 21 日

その312 『つれなかりせばなかなかに』

カテゴリー: 小説・作家 — みよこ @ 12:00 AM

つれなかりせばなかなかに―文豪谷崎の「妻譲渡事件」の真相『蓼喰う虫』に関連して、瀬戸内寂聴著『つれなかりせばなかなかに―文豪谷崎の「妻譲渡事件」の真相』を読んだ。副題が文豪谷崎の「妻譲渡事件」の真相となっている。この著者が書いた伝記作品は今までもいくつか読んだ。が、この本は、伝記作品ではなく、主に和田六郎のご子息である和田周氏からの聞書きを中心としたいわば取材ノートになっている。
タイトルの「つれなかりせばなかなかに」というのは、佐藤春夫が千代夫人の15、6歳の頃の芸妓姿の写真と共に保存していた詩の一節からとられている。

この本には、周氏が父母と一緒に佐藤家へ行ったときの佐藤夫妻の様子や、戦後の食料のないときなのに料理上手な千代夫人が次々と手品のように料理を出してきて、さらに六郎氏のお皿のトンカツはさりげなく他の人の分より大きかったというエピソードも出てくる。それを子供だった周氏が「ずるいなぁ」と指摘したときの六郎氏の様子もなかなか面白い。

周氏は、親子で佐藤家を訪ねる前に、母親から父と千代夫人の恋愛の話も聞かされていたそうだ。文豪二人の妻になった人と昔大恋愛をしたということは、六郎氏にとって、誇らしいというのか、そういう気持ちもあったようだ。妻にそのいきさつを逐一話している。

ここで注目されるのは、妻との馴れ初めも千代夫人のことが尾を引いているのを感じることだ。
そのなれそめは、上司が離婚して、その妻が実家に帰っているところをくどき落としたというものだ。その際切り札にしたのが元夫のところに残した子供を引き取るという約束だ。千代夫人との事が壊れた最大の原因がこの子供の問題だったということは和田氏にもよくわかっていたのだろう。だが、結局この約束は言を左右にして実行されることはなく、妻は大変傷ついたらしい。

それでも千代夫人にとって六郎氏はいつまでもかわいい存在だったらしく、その妻には何かと厳しくあたっている(^^;

千代夫人は、『蓼喰う虫』の頃、それまでの梨の花のようなおとなしい性格から、夫にとって自分が女性でないことの苦悩を経て、恋人を持つことで自信を取り戻し、大所帯の要として家庭を切り盛りするようになっていた。この頃の千代夫人の様子は『谷崎家の思い出』に詳しいが、その言動、態度は女性から見てもまことにカッコイイ。終平氏が兄嫁の全盛期と表現したのもよくわかる。

が、佐藤春夫と結婚してからは恋のトキメキはなくなり、その人扱いのうまさが残った。おかげで佐藤家はいつも大勢の弟子がいたらしいが、佐藤春夫の情熱も比較的早く冷め、別の女性に夢中になったりしている。その一方で和田氏の妻にも興味を示し、こたつの下で手紙を渡そうとしているところを千代夫人にみつかり、和田夫人は以後出入り禁止になっている。

長い年月をかけて谷崎と千代夫人は離婚したわけだが、千代夫人にとって谷崎はやはり特別な存在だったのだろうなと思うことはある。鮎子さんという娘がいることもありその後も長く付き合いがあったわけだが、そのところどころで千代夫人の気持ちが見えるエピソードがあちこちの本で出てくる。作品上で何度も抹殺され、父母の面倒を見てくれという口実で遺棄され、極貧にあえぎ、散々な時期を過ごした末、小田原事件のあと、やはりどうしても谷崎にとって女性にはなりえなかったが、それまでとは違った微温湯のような(谷崎)幸せを経て、離婚に際しては千代夫人の養母や兄との話し合いまで谷崎がキチッと仕切った。谷崎にとっても、千代夫人は特別な存在だったのだと思う。

2006 年 9 月 1 日

2006年08月 COBALT HOUR

カテゴリー: 思い出の壁紙 — みよこ @ 12:00 AM

COBALT HOUR

正解

「COBALT HOUR」 12名 今回は増えました(^^)。一発正解の方もいらっしゃり、とても嬉しいです。
 思い入れも多く投稿していただきまして、ありがとうございます。

ヒントの表示 9名 今回解答にはひらがな、カタカナも用意しておりましたが、小文字のもののや、中黒(中点)の入っている回答、全角のものなど、バラエティーに富んだ回答があり、「正解したはずなのに…」というヒント表示も多かったように思います。毎度のことながらこのあたりは難しいですね。

その他の回答

「埠頭を渡る風」 2名 なるほど。

「Midnight Scarecrow」 1名 この回答を見たとき、「すごい」って思いました。

※ここで表示した○名という数字は、スペルの書き換え等のために続けて回答された分を差し引いた数字です。



2006年08月 COBALT HOUR

歌詞情報:COBALT HOUR 松任谷由実 歌詞情報 - goo 音楽

アルバム:COBALT HOUR

たっき~さん

Dさん

Snow Girlさん

tcさん

81年より25年間住んだ港区海岸(芝浦よりさらに海側です)のアパートを6月に出ました。その周辺の風景とこの曲はとてもシンクロしています。豊洲の会社で徹夜してタクシーでレインボーブリッジを渡って帰宅するとき東京湾が青紫色に凪いでとても綺麗で、また頑張るかと思いなおしたものです。

guanyさん

生ベレG知ってる人も少ないでしょうね。
当時はカッコいい車やったな。

ふるだぬきさん

クルマの免許を取ったのが、この曲が発表された頃でした。
初めて首都高速を走ったとき、クルマから見る夜景がまさにこの曲のイメージだった。

つーるどBeijingさん

まいどっ!!


いつも思い入れじゃなくて、壁紙の感想になっちゃってます。
今年は寒いので、夏っぽい曲が却って新鮮ですね。

来月も楽しみにしてますね。

ふたさん

思い入れは特に無いのですが、この写真はレンボーブリッジ辺りでしょうか。
私の住まい的にはベイブリッジ辺りでこの曲を思い浮かべます。埠頭を渡る風もなんですがね。
川崎の方からベイブリッジを渡って、横浜市街に向けて曲がる右カーブ付近がとても好き!
目の前に山の手の山、マリンタワー、ランドマーク、クイーンズ、観覧車と展開して目を楽しませてくれます。
機会がりましたらご覧ください。
ただ、今は八景島方面に行く道が邪魔になったかな?

Binoさん

我が青春の曲です・・・(^^;
羽付べレットに憧れました。

みるきーちゃんさん

凄く綺麗な色ですね。。
この歌の思い入れは。。。
ミルキーって出てくるところ(爆)
もう、それだけで嬉しかったりする。。
う~~ん。。幸せ。。(笑)

ちょこびさん

この頃…
ケンさんVer.で歌ってるわたしがいま~す(^^;

みよこの思い入れ

今回は壁紙を作りながらこの曲の風景を楽しみました。
やはりこの曲ですぐに思い浮かべるのは「白いベレG」ですが、マサノリが購入したミニカーでしか知りません(^^;
コバルトアワーの景色、いつか体験してみたいです。

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