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2006 年 1 月 26 日

その292 『聞書抄』

カテゴリー: 小説・作家 — みよこ @ 12:00 AM

第二盲目物語と銘打たれている『聞書抄』を読んだ。実は年末に読んでいたのだが、なかなか書く時間がなく、今になってしまった。

この小説は、先に発表された『盲目物語』を読んだ近江の国の長浜に住む「読者」から『安積源太夫聞書』という文書を託されることから始まる。
この文書は、石田三成の娘で、三成の死後も何とか生き延び、尼になった女性からの聞書きとされる。内容は、「元々三成に仕えていた武士が後に故あって盲目となり、零落して豊臣秀次が悪逆塚の塚守になった始終を伝える」ものだ。なぜ三成の娘が語るかというと、その盲目になった武士が三成の娘にその悪逆塚で出会い、とはずがたりに来し方を語ったからだ。

この盲目になった武士がずっと恋い慕っているのが、秀次の妾の一人である一の台の局だ。この女性には「おみや御前」という連れ子がある。

『盲目物語』は、松子夫人を思い描いて書いたと本人が松子夫人への手紙に書いている。が、この第二盲目物語と銘打たれた『聞書抄』は、私には妹尾夫人を思い描いているように思える。そしてその面影は一の台の局と尼の両方に見えてくる。さらに言うと、尼には『夢の浮橋』の第二の母のイメージが重なってくるのだ。
ちなみに、妹尾夫人には谷崎の実の娘鮎子さんと同じくらいの年の連れ子がいた。そして、かなり年下の夫と結婚している。

この小説の舞台になった佐和山城址やその周辺へは、松子夫人と旅行している。松子夫人にもやはり女の子の連れ子がいる。だが、この一の台の局母子の心情については、その多くを松子夫人とその末の妹の関係から取材しているのかもしれない。谷崎の作品には谷崎をモデルにしているようで、実はその周辺にモデルがいたりするものが多い。これは学生時代を描いた話だが、『羹』という作品など、「この人物のモデルは谷崎だ」と登場人物のモデルの一人が書いたのを、後に谷崎自身がそれは自分に似寄りの誰々をモデルにしたんだと訂正していたりする。それが、『羹』ばかりでなく、色々な作品で起こる。細雪の貞之介だって、普通に考えたら谷崎がモデルだが、どうやら松子夫人の前夫を多く頭に置いているようだし、『猫と庄造と二人のおんな』もそうだ。羹は別として、関西移住後はどうやら芸術的興味を持った相手から作り出したイメージを具現化するのに自分の奥さんを使うということを、手法として確立していったようだ。そして、その役目を実に見事に演じたのが松子夫人だったのだろう。

それにしても、『夢の浮橋』といい、『聞書抄』といい、妹尾夫人の影がみえるもののルーツは「谷崎家父祖伝来の地」近江なんだなぁ。そこに彼女に対する思い入れの深さが感じられるのだ。

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