その273 『アキハバラ@DEEP』
いつものように、ベッドの脇にマサノリが購入した本が転がっていた。開いてみたら『アキハバラ@DEEP』というタイトルで、著者は石田衣良だった。面白そうだったので、早速読んでみた。
この小説は、秋葉原を行動の基点にしているそれぞれ吃音、女性恐怖症&不潔恐怖症、癲癇という持病持ちの3人の男の子たちが、それぞれの得意分野である文章を書くこと、デザインをすること、音楽を作ることを活かして一緒に仕事をしていたところに、格闘技を得意とする美少女が加わって会社を作るところから始まり、さらに2人のメンバーが加わって、物語が展開していく。
テーマには、プログラムの著作権やネットビジネスの問題という、かなり難しい問題が扱われているのだが、一方で、それぞれ問題を抱えた若者が、自分のできることを活かして自ら道を切り開いていくという、サクセスストーリーにもなっている。
ハンデはあるがとても魅力的なメンバーの物語は、ナレーションに先導されて進行し、読者はどんどん引き込まれていく。そして、このラブレターズでも書いた、同著者の『波のうえの魔術師』のようなクライマックスに向かっていくのだが、読者層を意識してか、ゲームによくあるキャラクターと展開が用意されている。
時代背景は、現在から近未来。誰もが知っている人がモデルであろう人物が登場したり、あるサイトが名前を変えて登場したりして、とてもリアルだ。この小説は、現在進行している色々な問題、多くの人が抱えている悩みを解決するヒントを運んできてくれる。
それにしてもすごい想像力だ。それは綿密な構成の上に展開されている。この人の小説は、だから面白いのだろうが、それにしても短期間にこれだけの大作を次々に書けるなんて、すごいなぁ。
が、やはり問題が大きすぎるし、こんな近くの未来のことでも予測は難しい。そのためか、読み終わったときには、少しはぐらかされた気がした。SF的な結末は、出せない答えの逃げ道として用意されたのかもしれない。
それでも今、このタイミングでこの小説に出会えたことに、私は感謝している。







