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2005 年 9 月 8 日

その271 『アッコちゃんの時代』

カテゴリー: 小説・作家 — みよこ @ 12:00 AM

アッコちゃんの時代林真理子著『アッコちゃんの時代』を読んだ。この小説は、ミュージカル「ヘアー」をプロデュースして、ユーミンのデビューのきっかけになった川添象郎さんの、奥さんがモデルになっている。
主人公以外のモデルも非常にはっきりしている。主要なメンバーについては名前を変えてあるのだが、ディテールを読めば、それが誰を表しているのかはすぐわかる。だから、バブル期から現在までのノンフィクションとしても読める。さらに、この作品を書くにあたって主人公に取材をしているのだが、この小説ではその取材シーンまで登場させている。つまり、林真理子自身がまたモデルのはっきりした登場人物となっている。

主人公の女性は、地上げの帝王と言われた人の愛人になって週刊誌を賑わし、のちに女優の妻から川添氏を奪う形になったことで再び騒がれたのだが、その間、この女性がどのような気持ちや態度でこれらの人たちと交わってきたのかが描かれている。その中で、前半のバブルで一躍表舞台に登場し、あっという間に凋落した人物の世界と、後半の元から当たり前のように華やかな世界に住み、バブルであろうとなかろうと居続ける人の世界が非常に対照的だ。それでも、バックグラウンドがどんなに異なっていても、前半の人物と後半の人物の行動に一部共通点があり、それはこの主人公のせいなのか、男性の一般的な性質なのか、考えさせられる。結局、別の人から移って来る人は、一定の時期が過ぎればまた別の人に移っていくということか。
というより、男女関係なく一度強烈な刺激を味わうと、それが薄れてきたときに新たな刺激を求めるということなのかな。

この小説では取材する側と取材される側の緊張感も描かれている。アッコちゃんと林真理子の世代差は、ある意味一番遠い(というか、興味を持って取材はしてみたが、どうにも感情移入がしにくいタイプだったように思える。)。この手法は、そういう取材対象者を描くための苦肉の策に思えた。
その一方で、川添氏の描き方がとってもいきいきしている。このキャラクターの魅力が小説にテンポを与え、クライマックスを作っている。そしてこのキャラクターが、物語の結末に明るさを与えている。
この小説にはキャンティの創業者である川添氏の父とその後妻と、母であるピアニスト原智恵子の話も出てくるので、『キャンティ物語』ユーミンカタログのキャンティ関連にある原智恵子の伝記をあらかじめ読んでいるととても面白い。もちろんそれらを読んでなくても、そのあたりの事情は川添氏のセリフを通してしっかり記述されているので問題はない。
なお、キャンティ関係については、ラブレターズでもこちらで書いている。

バブル期を舞台にした林真理子の小説に、ラブレターズでも書いた『ロストワールド』があるが、こちらは主人公のモデルの一人として脚本家の中園ミホに取材している。中園氏と林真理子はドラマ「不機嫌な果実」で仕事をして以来仲良くなり、それがきっかけで取材することになったそうだが、お互いに考え方を共有できるためか、この取材はとても楽しかったそうだ。『アッコちゃんの時代』と同じく『ロストワールド』も比較的モデルがはっきりした小説なのだが、主役のモデルが複数の人物で作られていて、こちらは完全にフィクションとして出来上がっている。こちらもあわせて読むと、面白いと思う。

そうそう。この小説ではユーミンが盛んに引き合いに出されているのだが、その中で、ユーミンが主人公に「おっ、魔性の女」と声をかけている。週刊誌で魔性の女とたたかれるのはうっとうしいが、ユーミンにこう言われると嬉しかったと本人が言っていたと週刊新潮に出ていたが、確かにユーミンに言われて嬉しかったというのはわかる気がする。ユーミンは、他人の生き方に対してあらかじめ固定観念を持って線を引いたりしないように思える。あるがままに受け入れて興味を持ち、面白がる。だからこの「魔性の女」という言葉のニュアンスに否定的なものを感じず、逆に嬉しく思えたのだろうと思うのだ。

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