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2005 年 8 月 25 日

その270 『Jポップの心象風景』

カテゴリー: ユーミン — みよこ @ 12:00 AM

Jポップの心象風景烏賀陽弘道著『Jポップの心象風景』を読んだ。この本は、別冊宝島『音楽誌が書かないJポップ批評』での連載「『流行り歌』の心象風景」をまとめたものだ。
採り上げられたアーティストは、桑田佳祐、松任谷由実、GLAY、ザ・ブルーハーツ、草野マサムネ(スピッツ)、浜崎あゆみ、椎名林檎、B'z。もちろんユーミンを目当てに読み始めた。

この評論で著者は、日本人の心に刷り込まれている宗教観をベースにJポップという音楽分野について語っている。それも資料を大量に用意するいわゆる科学的と言われる手法ではなく、どちらかというと想像を自由にめぐらせた手法で書いている。思い入れが強く、あらかじめ知識をたくさん持っているアーティストについては資料も交えているが、それほどでないアーティストについては特にそれが顕著になるようだ。確かに、科学的手法だけでは見逃してしまうものというものもあるわけで、それはそれで悪いことではないと思う。というわけで、前書きで著者自身があらかじめ断っているとおり、多少強引とも思えるところもままあり、中にはそれを言うなら「あえて書かない」ではなく、ある程度の資料を元に言って欲しいという仮説も登場した。

一通り読んでみて、一番力が入っていて説得力のあったのは、最初の桑田佳祐だった。湘南という土地で、その時期に生まれ育ったことによって育まれたであろう感情が丁寧に描かれている。ここで採り上げられているアーティストの中で、著者にとって一番思い入れのある人物なのだろう。

ユーミンについては、本人も書いているとおり元々はあまり興味のある対象ではなかったようだが、初めてユーミンのコンサートを見たときに、予習をしていなくても安心して「受容されている」感覚があったそうだ。そこでユーミンをなぞらえたのは、神話に出てくるアメノウズメノミコト。天照大神を天岩戸から引っ張り出すために踊り、他の神様たちを大いに楽しませた神様だ。マサノリに言わせると元祖ストリップだそうだが(苦笑)、ユーミンはそのアメノウズメノミコトを思い起こさせるのだそうだ。
確かに、機知に富んだ会話と、人を楽しませることが大好きなところはそうかもしれないと、読みながら思った。特に、コンサートのときの踊り、MC、そしてウソラジオでのリラックスした会話などを思い起こすと、大いにうなずける。

その他には、椎名林檎のところが興味深かった。著者はどうしても男性ロックアーティストについての方が説得力があるのだが、椎名林檎については、『歌舞伎町の女王』を採り上げたことで、息を凝らして読んだ。この曲は、1回聴いただけで深く心に突き刺さる。それは私が女性だからかもしれないが、それをこの評論は掬い上げていた。結びがやはり少し突飛な感じがするが、それ以外はある程度納得がいった。

著者があとがきで「音楽ってそんなに小難しいものなの?」と思われるのは本意ではないと書いているが、この評論はある程度覚悟をしてかからないと、読みきれない可能性はある。私自身こういう評論は嫌いではないので読み始めたら一気に読めたが、こういう論法で書かれた本は随分久しぶりだなと思いながら読んだ。

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