その224 『泳いで帰れ』
サラリーマン小説で有名な奥田英朗のアテネ五輪観戦記、『泳いで帰れ』を読んだ。
オリンピック物というと、どうしても感動がどうとか、きれいな文章が多くなりがちだが、この観戦記は本音炸裂で実に面白かった。
現地での食事のこと、各国の人々の気質に対するとまどい、特にちょっと油断すると自分の席が侵食されてしまう「領土問題」などが感情豊かにつづられていく。そして、柔道では思い切り感動し、野球では思い切りブーたれる。
「泳いで帰れ」という言葉は、必ず勝たねばならぬという重荷を背負わされたためかとても硬くなり、石橋をたたいても渡らぬ戦法で銅メダルを取った野球チームに対して投げられた。
長島ジャパン。残念だった思いは多くの人が持っただろうが、それを言いづらい状況の中、ここまで見事に不機嫌を表す人もなかなかいない。野球ファンで、野球を見るために自分の直木賞の授賞式を欠席してまでアテネに来たのだ。それだけに、この憤懣は大きかったのかもしれない。
この本と一緒に、『野球の国』という紀行文も読んだ。この作家がいかに野球好きかがわかる作品だ。
しかし、正直言って第一印象は「何だかジジ臭いなぁ」だ。マサノリより若いのだから、もう少し若々しくてもと思うのだが、サラリーマンの中間管理職を考えれば、そんな感じなのかなとも思った。精神科医伊良部シリーズではジジ臭さは感じないんだけど…(このシリーズも面白いので、また後で書くと思う)
確かに、ホテルの趣味など理解できるところもあり、同年代の人間として、こういう心境の変化が出てくる年代なのかなと思った。
それにしても、『泳いで帰れ』で随所に出てくる"ワオ"と、『野球の国』でたびたび出てくる"すみませんね、偏屈で"には、んーっ(^^;







