その199 『ニシノユキヒコの恋と冒険』
川上弘美著、『ニシノユキヒコの恋と冒険』という小説を読んだ。恋愛小説はあまり得意としないマサノリが、この著者の名前をこのごろ良く見るということで読み始め、珍しく私に勧めてくれた作品だ。
この本は、10篇の短編小説でできている。いずれも、ニシノユキヒコという男性と関わった女性が、彼との関わりを1人称で淡々と語っているものだ。あまりにも淡々としているので、ちっとも冒険という感じがしない。
帯に書いてあるから書くが、このニシノユキヒコという男性、どうやら女性を本気で愛せないらしい。愛せないとは書いてはいないが、どうも無意識に愛されることを拒んでいるように思われる。それが、エピソードを重ねていくことで表現されていく。
それでも数多くの女性遍歴の中から、その行動の割には意外と普通の感覚を持っているニシノユキヒコは、結婚しようと思ったことが2、3度ある。が、はたして本当に結婚しようと思っていたかはかなり疑問だ。
そして最後の女性。彼は幸せだったのだろうか。それとも…
ある意味幸せだったのだろう。それが彼のたどりついた女性の愛し方だったのかもしれない。
そして最後の最後。彼はきっと満足だったと思う。もしかしたらこのときを、彼自身が一番待っていたのかもしれない。この突然の出来事は、神様が、もしかしたらニシノユキヒコ自身が自分に与えたプレゼントだったのかもしれない。
私にはそう思える。
小説の中では、それぞれの主人公が出会ったりしている。そこで繰り広げられる女性同士の「国家外交にも匹敵する」言葉に表れない戦いがリアルだ。でも、その場にいる男性は、そんなこと気づかないんだよな。
2004.05.19
あー、迂闊だった。
この短編集は、だいたい時系列になっているのだが、冒頭の作品と最後の作品だけ時系列ではない。
そうなのだ。これが重要だったのだ。作者は最後の作品で、明確に答えを出しているではないか。
最初の作品で問いかけ、最後の作品と、その前の最後の女性の作品、この2作で答えを出している。
それに気づくと、その間にはさまる他の作品1つ1つが、ニシノユキヒコという難解な人物の理解を助ける大切なエピソードになる。







