その178 『蹴りたい背中』
昨日史上最年少芥川賞を受賞した、綿矢りさの受賞作『蹴りたい背中』を電子書籍で読んだ。この人の作品では、その104に書いているとおり『インストール』を読んだことがある。今回最年少で芥川賞候補になっていると知ったとき、これは! と思い、すぐにDigiPaで購入した。
『インストール』は物語として楽しめる作品だったが、今回の『蹴りたい背中』はもう少し不健康さを増して、『インストール』にも少し見られた欲望の部分を膨らませている。この子はこれからこの方面をさらに突き進んでいくのだろうか。また、心理描写も深くなっている。
この作品は、クラスでも部活でも徐々にフェードアウトしつつある1人の女の子が、ふとしたことからもう1人仲間はずれのようになっている男の子に興味を持ち、微妙な気持ちが芽生えるというものだ。
主人公は、次第に1人になりつつある現状を受け入れることができない。それまで親友としていつも一緒にいた子が、別のグループに所属するようになったのがきっかけだ。親友(だった)子はそれに心苦しさを感じ、グループ内に話を通して主人公をグループに入れようと、再三手を差し伸べる。そのたびに主人公は拒む。この主人公は「同情されて」とか、「仕方なしに」という空気に反発しているのだろう。それでも次第に1人になっていくことに苦しさを感じて、それを他の生徒たちを見下して考えることで紛らわそうとしている。それに対して、その男の子は、仲間はずれという現状を受け入れている。もちろんその状態が好きなわけでは決してないのだが、その状態に抵抗はしていないすることはもう既にやめている。
そんな2人は、彼の部屋に2人でいても性的な空気は全くない。が、2人の間に存在していた大きなものが崩れたとき、2人はどういう関係に踏み出していくのか。ラストはとても刺激的だ。たぶんお互いの心には既に下地ができているはずだから。
ところで、「綿矢りさ」という子は、テレビで見たけどけっこうかわいい。この顔でこういうことを考えるというギャップが魅力の1つかもしれない。でも、テレビに映っている彼女は、やぱりどこか引いているところがあって、そこに彼女の小説の主人公の姿が浮かんで見えた。
2004.01.18
この小説は、後効きする。読んだばかりでは見えないものが、1日経ち、2日経ちしていくうちに、登場人物の行動や、ふとした言葉が意味をもって浮かび上がってくる。たぶん、もう一度読めば、また違った発見があるような気がする。
それにしても、先生の「好きな人同士でグループを組んでください」 という言葉のなんと残酷なことか。このあたりの気まずさは、私にもよくわかる。ただ、グループでたわいもない話をしているときにふと訪れる沈黙が怖いというのは、この作者の特徴のようだが、他の生徒がなんでそんなに一所懸命夏休みの日程を埋めなくてはならないのか、何でそんなに暇が怖いのか不思議に思った。







