その77 雪の曙
とはずがたり第2弾。
今日は作者二条の初恋の男性「雪の曙」について書きたい。
前回、この人と結ばれたらどんなに幸せだっただろうと書いたが、実は関係は当初からあった。とはずがたりで作者も「新枕と言ひぬべく」、つまり初めての人と言ってもいいくらいと書いている。初めての人と言ってもいいくらいということは、そうではなく、実際は後深草院が最初の男性だがということなのだが、私は疑っている。わざわざそのように書くということは、実際は曙が最初の男性であると告白しているようなものに思えるのである。事実、巻一を注意深く読んでいるとそのように取れる。
だが、二条が幼少の頃から彼女を紫の上にするべく、後深草院が思っていたことは、父の雅忠は知っていたし、曙も知っていただろう。ということで、それまでは院をはばかって秘密の関係でいたと考えられる。
でも、院がいよいよ年来の計画を実行しようとする気配を知ると、曙は突然大胆になる。初めはこの行動が理解できなかった。だが、院が二条の里で二条と結ばれたあと御所へ連れ去るという事件が起こったとき、院は二条の叔父に「しばし人に知らせじと思ふ。後見せよ」と言っている。つまり、二条のことは公の妻とはせず、あくまで非公式の関係にしたいと言っている。院がそういう気持ちであることは父雅忠は知っていたはずであり、後を追ってきた雅忠は中途半端な状態ではかえって浮名が漏れて困るから、今まで通り女房としてそばに置いてやってほしいと院に食い下がっている。この部分も最初はどうして?と思ったが、突然大胆になった曙とこの記述、あと曙の言葉に父雅忠にあなたのことを頼まれたという言葉があるところを併せると、この突然大胆になるきっかけが父と曙との約束だったのではないかと思う。つまり、院との関係はそれとして、二条が里へ下がっているときなどには何かと面倒を見てやっとほしいと。
雅忠がもっと長く生きていれば、それももう少しスマートにできただろう。だが、二条が院との最初の子供を身ごもっているときに亡くなってしまう。これが二条の不幸の始まりだった。
ところで、『増鏡』を読むと、後に曙と思われる人物は後深草院の妹である前斎宮と契っている。この人、院の妹でありながら、二条の手引きで院と契ることになってしまった気の毒な人なのだが、その手引きをさせられた二条が、妙に意地悪く前斎宮のことを書いている。なぜこんな風に意地悪い書き方をするかなと思ってたが、『増鏡』の記事で納得した。
院とのことがあったあと、曙が熱心に前斎宮の母代わりの人を口説き落として、面倒を見ていたが、ある日、前斎宮は人違いで別の人と契ってしまった。それを知った曙は一時ひいてしまうのだが、それでも最終的には前斎宮を大切に扱い、子供を認知し、さらに別の女性にできた子供を前斎宮の子供として財産分与をしている。二条としては何か嫌味の1つも書きたくなるというものだろう。
曙がなぜ院と同じ女性とばかり契るのか、最初は不思議だった。が、最近やっと納得のいく答えを見つけた。院のあとをフォローして、陰に日向に心身ともに面倒をみることによって、政治的に有利に働くということもあったのだろうと。
曙の人を思いやる優しい性格がさせたこととも考えられるが。







