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2002 年 5 月 16 日

その76 『とはずがたり』

カテゴリー: 古典作品 — みよこ @ 12:00 AM

香港シリーズはひとまずお休みして、今日から少し『とはずがたり』という古典作品について書いていきたい。
この作品は、鎌倉時代、後深草院の女房二条が書いた日記なのだが、存在が知られてからそれほどの歴史がたっていない。
この日記が発見されるまで、増鏡の中の人物が本当は誰なのか、長いこと誤解をされていた院(亀山院)もいたが、この日記によって、それが後深草院のことだったことがわかったというものもある。歴史の時間に出てきた『増鏡』には、この日記からそのままとられたと思われる記事が多く載っているのだ。
はじめてこの作品を読んだとき、後深草院という人はなんて変わった性癖をもった人なのだろうと、いやな印象を持った。初めは純情な少年の心をもって二条の母親を慕ったであろうに、その忘れ形見の二条にさせたさまざまな屈辱的なことを思うと、怒りが湧いたものである。だけど、つい最近また読み返してみたら、この後深草院の哀しみが伝わってきた。
自分が天皇になったのを実の母親に恩着せがましく言われ(実は弟の方がより可愛がられていた)、鎌倉にも気を遣い、臣下にもどうもあまり尊ばれていなかったらしい体に若干の不自由がある小柄な上皇の哀しみ。
この院の立場が不安定なために、また院自身が内向的であったために、二条もつらい思いをしなくてはならなくなったのだ。つまり、肝心なときに守ってもらえない。

とはずがたり』には雪の曙という二条の初恋の人が出てくるが、この人、とても素敵。瀬戸内寂聴の『中世炎上』でも素敵に描かれているが、政治的にも経済的にも絶大な力のあった、しかも心遣いのこまやかなこの初恋の人と結ばれていたら、二条はどんなに幸せだったかと思うのだ。それだけに、側近中の側近でありながら、後深草院はこの人に複雑な気持ちを抱いていただろうということを、またひしひしと感じる。実際、院はこの雪の曙と二条の仲を知っていたと思われるのだ。
この日記、そういう面からもいろいろ読み応えがあるのだが、また別の意味、謎解きとしても興味の尽きない作品である。そして最後の方に、この作品を書く動機となった重要なことが書いてある。事実とされていることからはどうしても立証できないが、でも、もしかしたら…と思える記述があるのだ。その謎を解くために増鏡上中下まで買ってしまった。これについてはまた追々に書いていきたい。

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