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2001 年 10 月 15 日

その45 身代わりの恋

カテゴリー: 小説・作家 — みよこ @ 12:00 AM

ラヴレター岩井俊二監督の「Love Letter」と、同氏の小説『ラヴレター』を読んだ。
ある男性(藤井樹)が山の事故で亡くなり、その三回忌の後、元婚約者(渡辺博子)が、彼が昔住んでいた小樽の住所に手紙を出すことから始まる物語だ。
小説の方のあとがきで、脚本家の北川悦吏子が噛み付いている。
「死んじゃった恋人のことが忘れられないいたいけな女の子が、実は恋人が自分を好きだったのは、自分が初恋の女の子に似ていたからだ、と知る残酷な物語なのでしょうか」
女性からすると、どうしてもぬぐえない感情である。
一方、男性側からすれば、自分の死後、好きでも打ち明けられなかった初恋の女性に、婚約者という風に乗って、自分の気持ちを伝えることができたら、こんなロマンチックなことはないし、ハッピーエンドなのだろう。
そして、もう1人の登場人物、藤井樹の親友であり、婚約者の現在の彼になりそうな人である秋葉。彼はとても微妙な立場にいる。ここに死んだ男性の意思が働いているとすれば、
「もう自分のことは忘れて、あいつをしっかり愛してやれよ」
といっているととれなくもない。
そもそも藤井樹と渡辺博子は、はじまりから違っていたのだといいたいのかもしれない。
本当は秋葉が渡辺博子を好きで、2人で会うのもなんだからと4人で会ったとき、藤井樹が一目ぼれを理由に渡辺博子に交際を申し込んだのだ。女性に関しては全く不器用な彼としては珍しいことである。たぶん一目ぼれといっても渡辺博子自身に対してはまだ恋愛感情がなかったから言えたという見方もできる。
だから、自分が死んだ今、本来の形に戻したいという意思が働いたのか。
ここまで考えて、やはり女性としては反発したくなる。つまり、「藤井樹と渡辺博子の関係は、間違いだったわけ?」となるのである。どう考えてもコツンとぶつかるところができるのだ。
これ、渡辺博子を主人公にしているから複雑な気分になるのかもしれない。もし主人公が秋葉だったら…いや、それより死んだ藤井樹自身が主人公だったら、手放しでこの話に感動できるのかもしれない。
身代わりとして誰かを愛するという感覚。これ、小説の中や実際のことでよくある。好きだった人の妹だからとか、親友の愛した人だからとか、思い入れのある人のゆかりの人を愛するという気持ち、どうも男性にはこういう心理があるように思える。でも、女性にはないのよね。好きな人の兄はあくまでも好きな人の兄であり、特別な感情は持たない。親友の彼は親友の彼であり、それ以外のものでもない。たまたまその人を好きになってしまうことはあるかもしれないが。

この小説を読んで、気になっていることがある。初恋の女性のおじいさんの願掛けだ。樹という名前を付けた木のことである。この願掛けも、藤井樹の図書カードと同じように、彼の死後明かされるのだろうか。もしかしたら、そこには藤井樹と初恋の女性(藤井樹同姓同名)とのさらなる秘密が含まれているのかもしれない。そういう含みを感じさせる小説だ。

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