その5 今すぐ会いたいの
夫と交際中、夜になって急に会いたくなることがあった。仕事場からの帰りに電話ボックスから、「これから会いたい」と電話した。
彼の家から 私の仕事場へは這ってでもいける距離にあった。でも、夜ビールを飲む習慣のある彼は、「ビール飲んじゃったからダメ」のひとことで断ることが多かった。がっかりもいいところである。「なんで? どうして? 私と会うよりビールの方が大事なの?」とは言わなかったが、とても不満に思ったものだ。
ある日、やはり仕事が終わったあと、電話した。その日とても嫌なことがあって、なんとしても会いたかった。ただそばにいてもらいたかった。半ベソをかきながら電話した時、その日もビールを飲んでいたはずなのに、すぐ来てくれた。うれしかった。それだけで、その日にあったことはどうでもいいことに思えた。
平成元年、昭和天皇が亡くなったばかりの頃の出来事だった。







