イノ・コリオについて
彼は放課後までずーっと立たされていた。
みんな下校時刻で帰ってしまった。
でも、悪い事をしたとは思えないので、謝る気がなかった。
「謝ったら帰ってよし、じゃなきゃ、反省するまでそこにたってろ!」
こうなったら根比べ。持久戦だ!
あっちが折れるまで、立ち続けてやる。
夕日が沈む。
あのアニメの再放送も終わる。
しかし、謝ったら負けだ。
暗くなり、先生は職員室にいるが、まだ帰れない。
このままだと、噂のオバケと遭遇しそう。
いや、いっそ僕がオバケになってやる。
そうなりゃ、ちょっとした伝説だ。
・・・コリオとはそういう男だ。
彼は放課後まで補習させられていた。
どうしても解けない数式。
解をきいても理解できない。
歯ぎしりをして、涙がこぼれそうだった。
ただ、このままモヤモヤでは帰れない。
あるとき、さっと光が差し、脳の引き戸がスーっと開いた。
あたりは真っ暗、教室にはあきれ顔の先生と彼の2人きり。
何でこんな簡単なことに気付くのに、こんなに時間がかかったのか!
みんなとっくに帰ってしまった。
彼は再び歯ぎしりをした。
・・・コリオとはそういう男だ。
彼は未だにそこにいた。
みんな同じ目的を持った仲間だった。
ゲイジュツという名の下に。
熱くゲイジュツ論を闘わすもの。
静かに黙々と自らのゲイジュツを遂行するもの。
そこはいつも楽しい、終わらない放課後のようだった。
しかし、いつしか時が経ち、
ある者はさっさと次のステージへ。
ある者はそれに冷めて、違うステージへ。
ある者はその世界に憤慨し、悪口を残して去っていった。
しかし、彼はまだそこにいた。
先に行ったものが彼に言う。
「早くこっちに来たらいい」
後から来たものが彼に言う。
「いつまでそこに居るんスか?」
去っていったものが彼に言う。
「そんなとこに居て、何になる?」
しかし、彼はそこに居た。
いつまでも居残っていた。
あの、楽しかった時間が、またやって来るような気がして。
いつまでも、沈む夕日を眺めていた。
・・・コリオとはそういう男だ
管樹誠 豊 (かんじゅせい ゆたか・場末の詩人)

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