東武30000系電車って?
30000系電車(30000けいでんしゃ)は、1996年(平成8年)から2003年(平成15年)にかけて製造された東武鉄道の通勤形電車。1997年(平成9年)3月25日から営業運転を開始した。
概要
帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄(東京メトロ))半蔵門線と東京急行電鉄田園都市線の直通運転用として設計され、アルナ工機(現・アルナ車両)・東急車輛製造・富士重工業の3社で6両固定編成・4両固定編成各15本の合計150両が製造された。なお、アルナ工機と富士重工は本系列の製造をもって鉄道車両製造から撤退した。31610F・31408Fはアルナ工機が東武鉄道向けに製造した最後の車両であり、31406Fは最後の富士重工業製の電車となった。当初は、10000系列を改造して直通運転に充当する予定だったが、改造する費用面の問題などから本系列が製造された。
車体は軽量ステンレス車体であり、従来の東武ステンレス車と同じく「ロイヤルマルーン」色の帯を巻く。前頭部はFRPの成形品を使用し、併結運転を考慮して正面貫通式である。客室との仕切壁付近には地下線内での非常用の梯子がある。下部にはスカートを設置したが連結器の関係で高さを限界まで下げている。連結器は密着連結器であり、下部に併結運転用の二段式の電気連結器がある。上部の122接点が30000系と10000系列の共用、下部の37接点は30000系同士の連結用である。側面は10030系に準じているが側窓が2連のユニット窓となった。連結部には転落防止幌が設置されている。行先表示器はLED式であり、側面の中央には大形のLED式種別行先表示器がある。
直通先の東京急行電鉄田園都市線・半蔵門線に合わせ、本系列は東武として初めて運転台の主幹制御器にワンハンドル式を採用した他、前照灯がHID式となった。また、シングルアーム式パンタグラフ・自動放送装置・ドアチャイム・LED式の旅客案内表示器(千鳥配置)などの装備は1996年(平成8年)に登場した20070系に準じている。後にHID式前照灯や自動放送装置などは8000系車体修繕車にも反映されることとなった。なお、自動放送装置は、これまでの9050系や20050系、20070系の男性声から女性声へと変更となった。また、半蔵門線内は英語放送も行っている。乗務員室内は従来車からのグリーンの色調をやめ、グレーの色調に変更した。運転台には車両情報制御装置を初めて搭載しており、制御伝送機能や機器の監視機能のほか、行先表示の設定やサービス機器(空調装置、自動放送装置、車内表示器)の操作もこのモニター画面から行う。乗務員室仕切は客室から向かって左から(運転台背面は壁)、仕切扉窓、固定窓がある。遮光幕は両方の窓に設置している。
その他、6両編成の2・5両目と4両編成の2・3両目に車いすスペースを設置している。また、側面の行先表示器は幅広サイズのものを採用しており、半蔵門線直通列車は東武線内で行先の右側に「半蔵門線直通」と表示されている。客室内装はウォームグレーの化粧板を基調にした寒色系である。座席は青色のロングシートであるが、31603F・31403Fからは座面がバケットシートに変更した。初期車では座席端の仕切りが袖仕切であったが、2000年(平成12年)度の増備車の31607Fと31407Fからは仕様の見直しがあり、仕切板の大形化やスタンションポールの設置、荷棚やつり革を従来車よりも低くした。特に優先席付近の荷棚・つり革は一般席よりもさらに低くしているほか、2連のユニット側窓の片側を固定式にした。外観では転落防止幌が大形のものとなった。なお、スタンションポールはそれ以前の車両にも後に設置したほか、優先席のつり革は後年にオレンジ色のものに交換する際、低くした。
2001年(平成13年)度の増備車である31609F・31408Fからは東武初の全電気ブレーキを採用(後に既存車もソフト変更により全電気ブレーキ化)した。また、同年度の31610Fにおいては空気ブレーキやドアエンジンに圧縮空気を供給する空気圧縮機 (CP) について従来のレシプロ式からスクリュー式を採用した。2002年(平成14年)度の増備車の31611F・31411Fからはスクリュー式CPを本格的に採用した。また、直通先の東急田園都市線内での急行灯(通過標識灯)使用停止に伴い急行灯が省略されたほか、新製時より半蔵門線・東急線乗入れ機器(ATC/S装置や3社対応列車無線装置など)を搭載した。
他系列との併結は、同一の電気指令式空気ブレーキシステムを有する10000系列のみ可能となっている。この場合、同系列との併結時は起動加速度が2.5km/h/sに落とされる。
半蔵門線との相互直通運転開始(2003年)の7年前から製造が開始されているが、これは当初予定されていた1999年(平成11年)度の半蔵門線押上延伸に併せて東武では初採用となるワンハンドル車両について乗務員習熟を進める目的があった。
また、伊勢崎線浅草~曳舟間など10両編成が入線できない区間があることと、西新井工場または杉戸工場(南栗橋車両管理区の設置により現在はともに閉鎖)への検査入場の際に10両固定編成だと入線が不可能(最高20m車8両までが限界だった)なことから、あえて10両固定編成での製造はされなかった(2005年に50050系が10両固定編成で登場)。
現在の田園都市線のダイヤでは、朝ラッシュ時の上り列車に設定されている準急はすべて長津田始発だが、半蔵門線・田園都市線直通編成の路線図では中央林間駅も準急停車駅に加えられている。
- 編成(左が浅草・渋谷・中央林間方)
- 6両編成 クハ31600-モハ32600-モハ33600-サハ34600-モハ35600-クハ36600
- 4両編成 クハ31400-モハ32400-モハ33400-クハ34400
- 地下鉄直通運用の場合、6両編成の後ろに4両編成が連結される。編成の末尾2桁の車両番号を統一(例 : 31601F+31401F)して使われた。
運用
就役から50050系営業開始まで(1997年~2006年3月)
登場から直通運転開始前は伊勢崎線浅草口を中心とした地上線で使用された。4両固定編成は10000系列の2両編成と連結して6両編成で運用されることが多かった。2003年(平成15年)3月19日から、営団半蔵門線を介して東急田園都市線との相互直通運転を開始した。埼玉県北葛飾郡栗橋町の日光線南栗橋駅から神奈川県大和市の中央林間駅までの走行距離は98.5kmに及ぶ。さらにその3年後、2006年(平成18年)3月18日からは伊勢崎線久喜駅から中央林間駅(94.8km)までの相互直通運転も開始した。
2004年(平成16年)当時、東武の直通運用編成は15本と東京メトロや東急に比べて運用編成が少なかった(東武乗り入れ対応編成は東京メトロ25本・東急は31本)ため、本系列は走行距離の精算の関係上、東急田園都市線⇔半蔵門線内折り返しの運用が多くなり、日中に東武線内に入線することが極めて少なかった。
2005年(平成17年)に本系列の後継となる直通対応車両50050系の投入が発表され、51051Fが同年10月に、51052Fが翌11月に搬入された。51051Fの直通運転対応機器は新品だが、51052F以降は本系列に搭載している機器を移設することとなり、9月に31613F+31413Fの機器が取り外されている。
地下鉄乗り入れから外された編成は種別表示の修正(区間急行・区間準急・快速・区間快速などの追加と急行・準急の削除)を行い、同年12月から宇都宮線や日光線(新栃木以南)などで運用を開始した。これにより5050系の置き換えが進められた。なお、宇都宮線での運用は2007年(平成19年)5月上旬に8000系に置き換えられた。また、地上運用復帰と同時に10000系列との併結運転も再開された。現在2008年(平成20年)、中央林間・長津田~東急田園都市線~渋谷~東京メトロ半蔵門線~清澄白河・押上~東武伊勢崎・日光線~北越谷・北春日部・東武動物公園・南栗橋・久喜までの運用のほかに、朝・夕の区間急行列車や日中浅草~北千住までの各駅停車で見ることが出来る。
前述したが、半蔵門線直通時は基本的に編成の末尾の車両番号2桁を揃えて使われていたが、車体広告編成は2003年夏季頃から6両・4両編成を組み替えて使用することが多いので、末尾の数字が揃わないことが多い。
- 2005年度車体広告編成一覧
50050系営業開始後(2006年3月~)
2006年3月18日のダイヤ改正から50050系の投入が開始された。この時に直通運用は大幅に増加したが、速達列車での運用(区間準急→急行)に変更されたため、運用編成は1本の増加のみ(13→14)となった。改正後も50050系の落成に合わせる形で本系列からの直通運転対応機器移設が順次進められた。
2007年5月時点での置き換え状況は以下の通りである。地下鉄乗り入れ編成は30000系6編成と50050系10編成の計16編成となり、平日、土曜・休日ともに14編成が運用される。
50050系登場後も、半蔵門線系統では唯一編成を6両+4両に分割できる車両であることから、10両貫通編成が入線できない南栗橋/館林以北への直通臨時列車を運行する際は本系列が使用されている。以下に運行実績を記す。
- 2003年3月29日(往路)~3月30日(復路)に半蔵門線押上開業と伊勢崎線直通を記念して運転された「3社直通運転記念号」では、南栗橋から北は4両と6両に分割して下今市まで続行運転、4両は鬼怒川温泉行、6両は東武日光行として運転された。この時は東武日光の行先表示は用意されていたが、鬼怒川温泉の表示は設定されていなかったため、「臨時」表示だった。
- 2005年から毎年ゴールデンウィークに中央林間~太田間で運行されている「フラワーエクスプレス」では、館林で伊勢崎寄りの4両を分割・併合して館林~太田間は6両で運行される。
- 2007年7月28日には、31607Fが「隅田川花火号」に運用された。
直通当初は田園都市線での急行表示は赤字のみで「急行」と表示されていたが、2006年3月18日の久喜への乗り入れ区間延伸および東武線内での急行種別使用開始に伴い赤枠に「急行」と表示されるようになった。一時期は押上始発の30000系使用列車に限り旧表示がまれにあったが、その後新タイプに統一された。
2006年度からは、直通運用に使用されている編成も車両の検査入場などに絡む短期間ではあるものの、6両編成は浅草口で、4両編成は主に宇都宮線で使用される(10000系との併結は行われない)ようになったが、前記したように、宇都宮線での運用は2007年5月上旬に8000系に置き換えられた。
2006年10月から2007年4月中旬まで、31604F・31404Fの車体にパルシステム生活協同組合連合会の広告が貼付されていた。
30000系の地上線への転用については、弱冷房車の位置が東京メトロ車や東急車と違うことや、中間運転台部分が車内スペースを取ることでラッシュ時の乗降時間の遅延に影響していることなどが理由として挙げられている。
諸元
- 定員:139名(制御車(Tc))、150名(電動車(M)・付随車(T))、151名(車いすスペース設置のM)
- 自重:Tc1・2=30.0t、M1・M1A=36.5t、M2・M2A=37.5t、T1=29.0t、M3=36.0t
- 車体:長さ20,000mm、横幅2,789mm、高さ4,080mm
- 台車:モノリンク式ボルスタレス台車 TRS-95M/TRS-95T(SS-138/SS-038形)住友金属工業製
- 制御装置:IGBT素子によるVVVFインバータ VFI-HR-1420B(日立製作所製)1C4M制御
- 制動装置:回生ブレーキ併用全電気指令ブレーキ HRDA-2(運用当初は回生ブレーキのみだったが、その後全電気ブレーキに改修)
- 駆動装置:TD撓み板継手中空軸平行カルダン (TD-95)
- 主電動機:三相交流かご形電動機 TM-95 (190kW×4)
- 電動空気圧縮機:HS-20-1形(レシプロ式)/RWS-20形(スクリュー式、31610F以降と31411F以降)
- 補助電源装置:東芝IGBT方式静止形インバータ (SIV)(6両編成は容量190kVAと120kVAを搭載、4両編成は190kVAを搭載)
- 歯車比:7.07
- 運転最高速度: 100km/h(東武線)、80km/h(半蔵門線)、110km/h(田園都市線)
- 各鉄道会社の保安設備により最高速度が異なる。
- 設計最高速度: 120km/h
- 起動加速度:3.3km/h/s(10000系列との併結時は2.5km/h/s)
- 減速度:3.7km/h/s(常用)、4.5km/h/s(非常)
- 冷房装置:マイコン制御集約分散形16,000kcal/h×3台/1両(東芝製)車外スピーカー内蔵
関連項目
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』