バスに乗る
駅から家まで10分ほどバスに乗る。自転車でも来られる距離ではあるが、バスにも乗る。
あるとき、そろそろ発車というときに小さい男の子がもうひとりもっと小さい男の子と乗り口で困っていた。そろそろ発車だよ、君たちふたりで乗るの?わたしはこころの中で聞く。どうやら家族を待っているようだ。「すいません、まだきます。」と男の子はうしろを気にしながら、しかししっかりと言った。「まだきます。」ともっと小さい男の子。その子も心配してる。少しするとお父さんと思われる人がやってきた。「すいません、まだ来ます。」えっ、まだ来るんですか?と思っているうちに、高校生くらいの男の子がふたり走って乗り込んできた。「おーい、急いで。」とお父さん。えっ、まだですか?駆け足でおばあさんが乗車。「ふぅっ。」と息をついた。健脚なおばあさんだ。「もう、出ちゃうよぉ。」とお父さん。えっ、まだ来るですか?遠くからばたばたという音が聞こえてくる。もっともっとちっちゃい男の子を抱いたお母さんだった。「すいませーん。」と言いながら飛び乗る。「すいません、これで全部です。」とお父さんが言うと、バスはようやく発車した。小さい男の子ともっと小さな男の子は、よかったよかった、とほっとしていた。
またあるときには、ふたりのおばあさんが乗っていた。どうもふたりは耳が遠いらしく、大きな声で話していた。
「あんたさぁ、20円持ってる?」「いやぁ、いらないよ。」「20円おくれよ。」「いいんだよ。」あまりかみ合ってないようだけれど、ふたりは友情を再確認しているのか、握手を交わす。「あ、そうそう、20円持ってる?」「いやぁ、いらないよ。」「あたし、細かいのないんだ、だから20円くれたら、あんたの分も払ってやるよ。」「20円あげるよ。」たぶんバス代はひとり170円で、先のおばあさんは320円持っていたのだと思う。
「あれ、黒いの。」「あら、黒いの?」「あれ、黒い車だよ。」「あぁ、黒い車だね。」「いやだね、あれだよ。」「え、あれ、あれなの?」「あぁ、あれだよ。いやだねぇ。」「へぇ、あのひと、来るって言ってたんだ。」「いいや、でも来るんじゃないかと思ったんだよ。」「へぇ。」
ふたりの会話は永遠に続くんだと思う。本当にいるんだなぁ、志村けんみたいなおばあさんって。
駅から家まで10分ほどバスに乗る。自転車でも来られる距離ではあるが、バスにも乗る。